腹黒弁護士に囚われて、迫られて。ー輝かしいシンボルタワーで寵愛されていますー


「ごめん、まだ気分良くないから」



 初めて尚人の誘いを断った。


 今なら尚人と喧嘩の一つや二つできそうな気もするけれど、尚人は暖のような気が強い性格じゃない。


 私が喧嘩腰になったって、きっと喧嘩にはならない。


「じゃあ、俺、寝室で寝るけど……和歌は?」

「私はここで寝るね」

「ここで寝て体調良くなるの? 明日の朝ご飯と弁当も、用意してもらわなきゃいけないんだよ」


 ……は? 代わりにするとか、そういう発想が尚人には無いの?


『俺だったら一緒に協力して家事くらいやるけどな。そんで空いた時間に、めいいっぱい二人の時間を過ごす』


 また、暖のこの言葉を思い出しては、尚人と比べてしまった。


「……そんなに体調悪いなら、仕事は一旦長期で休みもらって、実家でゆっくりした方がいいんじゃない?」


 『家のことは俺がやっとくからさ』と、何故か妙に掌を返す尚人。


 浮気相手をこの家に呼ぶんだろうか。

< 33 / 186 >

この作品をシェア

pagetop