腹黒弁護士に囚われて、迫られて。ー輝かしいシンボルタワーで寵愛されていますー
「私、今研修期間中なんだよ。長期の休みなんてもらえるはずないよ。それに、尚人、ご飯は? お弁当はどうするの?」
「病気になったりしたら、休みもらえたりするんじゃん。研修だからとか関係ないよ。俺もガキじゃないんだし、ご飯はなんとかするよ」
関係あるに決まってる。ましてや、私は怪我をしたわけでも重い病気をしたわけでもない。
尚人が言っていることは『仮病使ってでも長期の休みをもらって実家に帰って』というふうにしか捉えられない。
「…………そう。じゃあ、職場にお願いして実家に帰ろうかな」
「うん、その方がいいよ」
嬉しそうに頷く尚人。
自分の欲が解消できなければ、私のことは用無しらしい。
翌日、仕事場に向かい、長期の休みが欲しいことを店長に相談してみた。
「うーん、っていうか、有栖川さんって結婚するのよね?」
「はい、一年後にはなりますが……」
「妊娠したりもするだろうし、有栖川さん、今ここで社員研修として働いてるけどさ、パートの方が良いんじゃない?」
「……で、ですが、ここにはパート募集してないですよね?」
「そうね。申し訳ないけど新しい人を採用するから、辞めてもらうことになるわね。有栖川さんは今、半年間の研修期間中で、もうすぐ研修も終わるし、慣れてきた頃に申し訳ないけど了承してくれるかしら?」
……そんな。
確かに、私の代わりなんていくらでもいるかもしれないけれど、こんなのはあんまりだ。
けれど、研修期間中ということは確かなので、受け入れないわけにもいかず、渋々受け入れた。
私が頷いても頷かなくても、半年が経ったら辞めてもらう予定だったんだ。それなら、もう自分から辞めてしまった方がいい。