腹黒弁護士に囚われて、迫られて。ー輝かしいシンボルタワーで寵愛されていますー
男性は、
「体調大丈夫か? いや、とりあえず風呂だよな。服とシャワーか」
私のことを心配しつつ、「俺の事務所行くか。そこで少し体休めろよ」と、私を自分の事務所まで連れて行くようだ。
ベリが丘にヤクザや暴力団、裏の仕事をしている人はもちろん立ち入れないのだが、『事務所』と聞くと身構えてしまう。
人には言えない仕事をしている人なんだろうか。
名も顔も分からないこの人に着いていっても大丈夫なんだろうか。いきなり襲われたり、殺されたりしないだろうか。
怖くなって、
「あの、私……婚約者がいるんです」
あえて先手を打ち、殺さないで、何もしないでアピールをする。
「へぇ、結婚するんだ?」
男性は何か言いたげな様子で、言葉に含みをもたせながら頷いた。
「……はい。なので、私をご自分の事務所まで連れて行き、肉体的関係を持たれたいようでしたら、それはできません」
「自意識過剰すぎ。というか、なんでずっと他人を貫いてんの。おまえ、俺のこと忘れたか?」
例え自意識過剰だとしても、間違いが起こるよりはずっといい。
「……ごめんなさい、あなたが誰か記憶にありません」
正直に謝罪をすると、ミラー越しに男性がため息を吐き、サングラスを外した。