腹黒弁護士に囚われて、迫られて。ー輝かしいシンボルタワーで寵愛されていますー
暖は「ああ、そう」と、再度頷き、また私にミラー越しに目線を向ける。
心配してくれているんだろうけど、やけにちらちらと見てくる暖が気になってしょうがない。
老けたなとか思われているんだろうか。
「……おまえ、自力で別れれんの? その婚約者と」
「…………え?」
暖の中ではもう別れることは決まっていて、まるで選択肢なんてないような言い方だ。
――決めきれなかった答えを一瞬にして出されてしまった。
決められたくない。私と尚人の今までを知らない暖に、簡単に答えを出されたくない。だって私、尚人とまだ話し合っていない。
下を向いて唇を噛み締めている私を見ていたようで、
「別れれば? 俺も別れたし。 その方がいいだろ絶対」
一人で勝手に納得している暖に歯向かう。
「暖が彼女とどれくらい付き合ってて、どういう思い出があったのかは知らないけど、私達の今までを一緒にしないでほしい」
「じゃあなに、おまえは浮気されたまま結婚すんの? バカなの?」
「その……尚人と浮気相手に別れてもらう……とか……」
「はあ?」
暖の苛立ちが雰囲気から見て分かる。ものすごく黒く渦巻いている。そういうオーラを醸し出している。