腹黒弁護士に囚われて、迫られて。ー輝かしいシンボルタワーで寵愛されていますー


「戻りましたーって、暖!」


 事務所に戻ると、暖が机の上に顔を付けてうなだれていた。


「……真島は?」

 なんだかんだ真島くんにここを出て行かれたことがショックだったようだ。

「話し合いはできたけど……辞めるって」

「そうか……ああー、くそ。もうすぐだってのにー」


 暖は悔しそうに頭を両手で掻いて、気持ちを露にしている。法で紛らわそうとしていた先程とは大違いだ。


「もうすぐって?」

「パラリーガル、真島の負担を軽くしたくて、新たに一人採用したんだよ。すぐは、あっちの仕事の引き継ぎがあるからってことで、来月から来てくれる予定だったんだけど、まさかこんなことになるとは思わねぇって」


 後悔しながらスマホの画面を見つめる。


「……真島くんに、連絡する?」

「ああ、そうだな……」


 ぶつぶつ言いながらも、スマホに目を向けた暖は真島くんに電話をし始めた。


「……おい、アイツ俺の電話着信拒否してる」

「え……!? 私も掛けてみるね」


 私の番号も着信拒否されていた。


「……わ、私のも着信拒否されてる」

「真島の野郎! 泣いて縋ってきても知らねぇからな」

「でも、真島くん暖をもっと支えたかったらしく、他の事務所でスキルアップしてくるって言ってたから」

「じゃあ着拒すんじゃねぇ! いっつも行動が突然すぎんだよ」


 文句を垂れながらも、「暖を支えるためにスキルアップ」この言葉を聞いた暖はどことなく嬉しそうにしていた。

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