腹黒弁護士に囚われて、迫られて。ー輝かしいシンボルタワーで寵愛されていますー
「だ……だって! 私、尚人と別れたらベリが丘から出ていかなきゃ行けないし。住む家ないし……いくら、サウスエリアに一般住宅向けのマンションやアパートが増えだしたっていっても人気すぎて空きなんか出ないし、尚人と今のとこ契約するのでさえ奇跡だったんだからね!」
「尚人と別れて違うヤツ見つけりゃいいだろ」
「そんな上手くいくわけないじゃん! 無理だよ! 尚人以上の人はいない! 私だってもう二十七だし、今結婚逃したらもう結婚なんてできないよ……」
「尚人、尚人、うるせぇ。どこがいいんだよ、そんな浮気男。年齢気にして結婚考えてんなら絶対後悔するぞ」
暖が車を停めた屋根付きの駐車場は、ベリが丘のビジネスエリアにあるシンボルタワーのすぐ近くだった。
遠目から見たことはあるけれど、近づいて見たことは一度もない。
「降りろ、着いたぞ」
「え? 降りろって……ここ、シンボルタワー」
暖は傘をさして私が座っている後部座席のドアを開けた。
「ちょっと傘持ってて」
暖は私に傘を持たせるなり「背中乗って」と、私の前に背中を向けて屈んだ。