つかの間の溺愛~私と娘を迎えに来た最愛の人はエリート自衛官でした~
 えみの父親で私のかつての恋人は鹿又夕貴と言う。彼とはこのファミレスで出会い、真剣に交際をしていた。彼は多忙な仕事にあたっていたようで、中々直接会う事は出来なかったが、映画だったり水族館だったり色んな場所でデートを楽しんだ。

「君とずっと一緒にいたい」
「夕貴さん」

 そう、愛を誓った仲だったのだ。時間が許せる限り、何度か逢瀬を重ねた。
 そしていつの日にか、身体の関係も持った。逞しい彼の肉体からは、情熱と淫靡さ両方が感じられた。

「夕貴さん……好きです」
「俺もだ。かえで」

 彼には浮気の気も無くて、満たされていた日を送っていた。そう。その日が来るまでは。

「なんで?」

 待ち合わせしていた遊園地に彼は来なかった。それどころかいきなり音信不通になったのだ。

「繋がらない……」

 電話は何度も何度もかけても固定のアナウンスが流れるだけで繋がらない。SNSもアカウントが消去されていたのだ。

「連絡出来ない……!」

 彼の住所や職場も知らなかったので、そちらへ連絡する事も出来なかったのだ。
 彼はまさに夢まぼろしのように、私の目の前から姿を消したのである。

「なんで、どうして! 夕貴さん……!」

 私は夕方になっても、遊園地から自宅に戻れないくらいに落ち込んでいた。
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