つれない男女のウラの顔

「お父さんが思ったより元気そうで安心した。って言っても、結果が出るまで油断出来ないから、お酒は控えてね。今はゆっくり体を休めて」

「分かったよ…」


しょんぼりする父の手の甲を撫でてから、そっと手を離す。ソファから立ち上がると、父が名残惜しそうに私を見つめるから胸が痛んだ。心を鬼にして踵を返した私は、今度は終始涙目で私達を見ていた母を捉える。


「お母さんも思い詰めないでね。何かあったらすぐに連絡して」

「うん、分かったわ」


ここへ来てすぐの時に比べたら、母の顔色はだいぶ良くなったように見えた。電話の母はだいぶ取り乱していたから、ほっと安堵の息を吐く。


「遅い時間にごめんね。次はゆっくり帰ってくるから。じゃあまたね」

「ありがとう京香。元気が出たよ」


父の優しい笑顔に、鼻の奥がツンとした。

涙が出る前に踵を返した私は、逃げるように玄関へ向かった。靴を履いて玄関のドアを開けると、後ろをついてきていた母もサンダルを履いて外に出てきた。


「会いに来てくれて本当にありがとうね」


玄関のドアを閉めた母が、再び涙目になりながら紡いだ。少しの時間しか一緒にいられなかったけど、母は最初から最後まで目に涙を浮かべていた。

闘病生活は、支える側も大変だと聞く。病気で弱っていく姿を一番近くで見るのは、とても苦しいことだから。

母のためにも、父の検査結果が良いものであってほしいと願った。

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