つれない男女のウラの顔

俺は今、心の中で何を言おうとした?久しぶりの夜間運転にテンションがおかしくなったか?これがドライバーズハイってやつ?


『目的地周辺です』


ナビの声にハッと我に返った。

気付けば花梨の実家の目の前だった。やはり時間が過ぎるのがあっという間だ。

家の前で停車させ、白い壁の家をチラッと確認する。二階建てのその家の外観はいたって“普通”で、特に派手ではないが、庭の花壇には色んな種類の花が綺麗に咲いていた。

その家を静かに見つめている花梨の顔は、酷く緊張しているように見えた。

このままひとりで行かせても大丈夫だろうか。一緒について行くべきか?

…いやいや、それはダメだろ。突然娘が見知らぬ男を連れて帰ってきたら、それこそ心配させてしまう。

だけど、今にも泣き出しそうな彼女をどうやって送り出せばいいのか分からなかった。
耐えきれず花梨の手を取ると、明らかにほっとしたような表情を見せた。それが少し嬉しく思えた。


「いってらっしゃい」


本当はその手を離したくなかった。だけどなんとか心を無にして彼女の背中を見送った。

どうしてこんなにも俺の中に閉じ込めておきたいと思ってしまうのだろう。女は苦手なはずなのに、自分から触れたいと思うことが不思議で仕方がない。感情を殺すのは得意なはずなのに、花梨を前にするとどうも難しい。


彼女が家に入ったのを確認した俺は、ひとり車を走らせ駅の方へ向かった。その間もずっと花梨のことばかり考えていた。泣いていないだろうか、ご両親の様子は大丈夫なのだろうかと。


とにかく落ち着かない。さっきまであっという間に流れていた時間が、一気に遅くなる。

とりあえずマックの店内に入ったけれど、そこでふと花梨の連絡先を知らないことに気付いた。

花梨がいつあの家から出てくるか分からない。そう思うとじっとしていられなかった。

コーヒーだけ注文した俺は、再び車に乗り込むとすぐに花梨の実家の近くまで戻った。

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