つれない男女のウラの顔
成瀬さんに相談して、こんなにもスッキリしないことってあるんだ。今までそんなこと一度もなかったから少し戸惑っている。
「敢えて“デートをしよう”と言ってくるってことは、向こうは元々花梨に気があるのかもしれないな」
「それはないと思います。匠海くんは母に合わせてくれただけだと…」
「匠海くん…ね。本当に親しいんだな。すぐに上手くいきそうじゃないか」
返す言葉が見つからない。
どうしてこんなにも突き放された気持ちになるのだろう。
この話を始めたのは自分なのに、なにを期待していたの。どんな返事を待ってた?
自分が分からない。急に頭が真っ白になって何も考えられない。
「…成瀬さんは、私と匠海くんが上手くいけばいいと思ってます…よね?」
「……そうだな。それで花梨も、花梨のご両親も幸せになれるのなら」
推しにこんな言葉をもらったら、普通は喜ぶはず。なのにちっとも嬉しくない。むしろ苦しい。
だからやっぱり、この気持ちは“推し”に対するものとは違う。だったら何だと考えた時、出てくるのもやっぱり“恋”しかなかった。
成瀬さんと会うのは苦ではないのに、相手が匠海くん含めて他の男性となると気持ちが乗らない。
最近の私は成瀬さんのことばかり考えているし、彼の声が聞きたくて、彼の熱に触れたくて仕方がない。
異性にこんな感情を抱いたのは初めてだから、気付くのが遅くなってしまったけれど。
──私、成瀬さんのことが好きだ。