つれない男女のウラの顔

一方成瀬さんはというと、女性に対して免疫はないと言っておきながら冷静で、表情も変わらない。今のところ赤面もしていないし、いつも通りといった感じ。

私のこと、妹みたいな感覚で見ているのかな。そうだとしたら、ちょっと複雑。


「洋画でいいか?」

「あ、はい」


テンパる私の隣で、成瀬さんは淡々と作業をこなしていく。その横顔を盗み見て、また胸がきゅんと締め付けられた。

そうしている間に映画が始まったけど、全然頭に入ってこない。今にも触れそうな距離がもどかしくて、そわそわしてしまう。

体の熱が引いてくれない。ずっと赤面していたら、さすがに怪しまれそう。


「…私このシリーズ好きです」

「俺も好きなやつだ。気が合うな」


ぐっふ…!
何とか話題を見付けて話しかけてみたら「俺も好き」攻撃に一瞬で心臓を射抜かれた。

今の私は成瀬さんの口から出る“好き”に耐えられない。私に向けた言葉ではないことくらい分かっているのに照れてしまう。


「顔、赤すぎ」

「だって……」


成瀬さんの「俺も好き」と同じタイミングで始まった映画のベッドシーン。テレビに映る外国人の俳優さんが、ベッドの上で何度もキスを繰り返しているから、思わず手で顔を覆った。

そうだった。洋画ってこういうシーンがあるんだ。成瀬さんのせいでただでさえ心臓バクバクなのに、目の前でカップルがイチャイチャし始めたら、そりゃ顔も赤くなるでしょ。


赤面する私を、成瀬さんは笑いながら見ている。その悪戯っぽい笑顔がまた良くて、思わず見惚れてしまった。

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