つれない男女のウラの顔

顔が沸騰したように熱い。テンパり過ぎて白目を剥きそう。

ほんとばかだ。思いっきり上司の髪の毛で遊んでしまった。さすがに何て言い訳をすればいいのか分からない。


「起こしてごめんなさい…えっと…成瀬さんの髪に糸くずが…」


苦しい。苦しすぎる。咄嗟に思いついた言葉を並べてみたけど、こんな真っ赤な顔で言ったって説得力なさすぎでしょ。

案の定怪訝な目を向けられ息を呑んだ。けれど成瀬さんは「そうか」と呟くと、少しだけ頬を赤く染めて目を逸らした。


あれ、もしかして信じてくれた?ていうか何で成瀬さんも赤面しているの?もしかして照れてる?だとしたら何に?私が髪を触ったから?それともこの状況に?

…そうだ、冷静に考えて今のこの状況っておかしい。異性に免疫のないふたりが同じベッドで寝転がっているのだから。

しかも今にも触れてしまいそうなほどの超絶至近距離。触れてなくても、布団から相手のぬくもりが伝わってくる。

……刺激が強すぎる。


「成瀬さんすみません…私ったら寝落ちして…しかもベッドまでお借りしてしまったみたいで…」

「俺の方こそ、ソファで寝るつもりだったのにここで寝落ちしたみたいだ…悪かった」


待って、成瀬さんはどうしてここで寝落ちしたの?やっぱりソファで寝た私を、成瀬さんがここまで運んでくれた?てことは、がっつり寝顔も見られた?

どうしよう、ほんと耐えらんない。寝落ちした自分が憎くてたまらない。


「私、何か変な寝言とか言ってなかったですか?」

「………いや、何も」


今の間はなんなの。まさか寝ぼけて告白なんてしてないよね…?
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