つれない男女のウラの顔

これはあくまでも花梨が幼なじみの男と会うための練習。わざわざ練習までするということは、やはり少しくらいは楽しみにしているのだろう。

けれど、同じ時間を過ごせば過ごすほど、その幼なじみに会わせたくないという気持ちが強くなっていく。

その男とも手を繋ぐのだろうか。名前で呼びあって、そして赤面するのだろうか。
考えただけでモヤモヤする。他の男には見せないでほしい。

だめだな、自分がどんどん器の小さい男に見えてくる。ひとりの女を独り占めしたいとか、まるで子供みたいだ。


ひとり悶々とする俺の隣で、純粋にデートを楽しんでいる花梨が可愛くて仕方がなかった。海鮮丼を美味しそに頬張る顔に、足湯に浸かってまったりする姿にただただ癒された。

そんな花梨を見ていると、本物の恋人になったような気分になれた。


足湯でカメラマンに俺たちの関係を訊かれた時、咄嗟に付き合いたてのカップルを装った。それに対して花梨は否定しなかった。それが純粋に嬉しかった。

カフェでが男の子が花梨に絡んできた時もそうだ。勢いで“お嫁さん”と言ってしまったが、やはり花梨は否定しなかった。

ただ空気を読んだだけなのは分かっている。でもそんな花梨のお陰で、本物の恋人になれたような気分になれたんだ。


てか、子供にムキになって嫉妬するとかどうかしている。だけどストレートに思いを伝えている目の前の男の子が、少しだけ羨ましく思えた。

もし俺がこの子と同じ台詞を言ったら、花梨はどんな反応をするだろう。この子に返したように、首を縦に振ってくれないだろうか。


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