つれない男女のウラの顔
夜景の見える海沿いの公園。事前にピックアップしていたデートスポット。
見事に周りはカップルだらけで、堂々とイチャついている男女もいる。
そんなカップルを見た花梨の頬が、ほのかに赤く染まっている。その純粋さが俺を刺激していること、花梨は気付いていないのだろうな。
「カップルって…こういう場所でもキスするものなんですね…」
「俺達もしてみるか?」
口をついて出た言葉に、自分でも驚いた。心の声が自然と漏れたと言った方が正しいのかもしれないが。
何度もイメトレはしたが、さすがにここまでするつもりはなかった。というか、さすがにアウトだろ。
花梨といると自分が自分じゃないみたいだ。歯止めが効かない。触れたくて仕方がない。
花梨の目が大きく開かれる。分かりやすくテンパる花梨を見て、やはり踏み込み過ぎたかと反省した。周りの雰囲気に流され、調子に乗ってしまったことが恥ずかしい。
おそらく心のどこかで、今ならいけると期待していたんだ。
今日いちにち、花梨は一度も俺の手を振りほどかなかったから。
「ずっと見ていた」「憧れを抱いていた」なんて言葉を貰ったから。
花梨が返事に困っていると思い「これはさすがにセクハラになるか」とこの話はなかったことにしようとした。それなのに…
「キス、してください」
俺の中で何かが弾けた。「後悔しない?」と尋ねておきながら、ここでやめるつもりはなかった。
髪に触れ、ゆっくりと距離を詰めると彼女の匂いが鼻腔をくすぐった。込み上げてくる気持ちを抑えながら唇を奪うと、花梨は繋いでいる手に力を込めた。
一度なんかじゃ足りないが、なんとか欲に耐えて唇を離すと、真っ赤な顔をした花梨と視線が重なった。