つれない男女のウラの顔
episode11
成瀬さんとのデートがあまりにも楽しすぎたせいか、現実に戻るのがキツくてたまらない。
謎のカメラマンに撮影してもらった唯一のツーショット。あのあとDMで写真を受け取った私は、あの日から何度も見返している。
成瀬さんの部屋の方を見て「旭さん」って呼んでみたりもした。ただの部下 兼 隣人に戻った現実を受け止められなかった。彼に対する気持ちは強くなる一方だ。
デートの次の日、ベランダで少し言葉を交わしたけれど、声を聞くだけで胸が苦しくなって、彼の熱が恋しくなった。
お父さんお母さんごめんなさい。早く結婚相手を見付けたいけど、他の人を好きになれる気がしないよ。
“マイコ、今晩ひま?”
“もちろんヒマよ。今日は台湾料理の気分だわ”
これ以上ひとりで抱えるのは無理だった。どうしても吐き出したかった。
休憩中に耐えきれずメッセージを送れば、マイコはすぐに返事をくれた。
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「───で、何があったの?ずっと暗い顔して、悩み事でもあるの?」
「……鋭い」
会社から2駅ほど離れた場所にある台湾料理のお店。マイコと何度か訪れたことがあるけれど、いつ来ても料理が美味しい。
だけど今日はあまり食事が喉を通らない。匠海くんとのデートが2日後に迫っているせいか、食欲が湧かない。
「京香から誘ってくるなんて珍しいから、推しの話でもするのかなーと思えば…負のオーラが出てますけど、何かあった?推しの熱愛報道とか?」
「推し…じゃなかった」
「え?」
「推しじゃなくて、恋だった」