つれない男女のウラの顔
「なんだか私が燃えてきちゃったわ。こうなったら今すぐ告白よ!」
「ちょっと、他人事だと思って…」
「完全に脈ナシなら話は別だけど、明らかに両思いなんだもん。デートもしたことだし、むしろ今しかないわ。お互いの気持ちが高ぶっている時にどんどん行かなきゃ。今を逃したらズルズルいくわよ。タイミングってすごく重要なんだから」
確かにタイミングは重要だと思うけど、今日か明日の内に告白なんて出来るだろうか。マイコのお陰で少し自信はついたけど、彼を前にしたら怯んでしまうに違いない。
でも……
(日頃の感謝を込めて、なにかプレゼントを渡すくらいなら出来るかもしれない。その勢いで、言えそうな雰囲気になったら…)
翌日、私は昼からずっとキッチンに立っていた。
成瀬さんにプレゼントするお菓子を作っていたためだ。
気合いを入れてクッキーやカップケーキを作ってみたのはいいけれど、彼は甘い物が食べられるのだろうか。やっぱり普通の料理の方がよかったかな。いやでもお菓子をラッピングした方がプレゼントっぽい感じがするし…。
ひたすら成瀬さんのことを考えながら、完成したクッキーとカップケーキをラッピングする。彼はいま部屋にいるだろうかとドキドキしながら。
明日は匠海くんと会う予定だけど、いまは成瀬さんのことで頭がいっぱいだ。
匠海くんとはただ食事に行くだけだと思ったら、少し気が楽になった。これも全てマイコのお陰。
「…できた」
決して綺麗とは言いきれないけど、ちゃんとプレゼントらしいラッピングが出来たと思う。
あとはこれを渡して、日頃の感謝を伝えて…そして、もし告白が出来る雰囲気なら、この勢いで…。
マイコはタイミングが重要って言ってたし。好きって、ただ一言伝えるだけなら、もしかすると…。
成瀬さんの部屋の前、インターホンを恐る恐る押した。
心臓が激しく波打ってる。ベランダで会うのとは違う。この瞬間は、やっぱり緊張する。
「───はい」
程なくして玄関のドアがゆっくりと開いた。それと同時に鼓膜を揺らした声は、低くて掠れた、大好きな声だった。