つれない男女のウラの顔
相変わらず凛としているその人は、無表情で私で見下ろしている。
クールな顔立ちにショートカットがよく似合っていて、モデルのようなオーラを放った彼女に圧倒され、逃げることも、返事をすることもできない。
どうしてここにいるのだろう。もしかして成瀬さんのところへ向かってる?そっか、やっぱり会うんだ。彼の車で出掛けるのだろうか。
…胸が痛い。
「単刀直入に聞くけど、成瀬くんとはどういう関係?」
淡々としているけど、どこか棘を感じる。私のことを敵として見ていることが手に取るように分かる。
「先日もお伝えした通りただの隣人です。あと他部署ではありますが、彼は上司です」
「…本当にそれだけ?」
「はい」
自分で言ってかなしくなる。この関係を変えたくて昨夜彼の部屋に行ったのに、何も出来なかったことをまた思い出してしまった。
言いたいことは言えず、思っていないことだけ伝えて。私はなんのために彼に会いに行ったのか。
そんな私とは反対に、目の前の彼女は成瀬さんに自分の気持ちをハッキリと伝えられる。
今の私が、この人に勝てるわけがない。
「付き合ってるわけではないのね」
「…はい」
「でも、成瀬くんのこと好きでしょ」
躊躇なく問われ、息を呑んだ。
どうしてバレたんだろう。もしかして態度に出てる?てことは、成瀬さんも私の気持ちに気付いてる?
思わず言葉を詰まらせた私の顔に、急激に熱がこもる。これでは返事をしなくても肯定しているようなものだ。
赤くなっているであろう顔を隠すために、咄嗟に顔を伏せた。そんな私を見て、彼女は静かに口を開いた。
「……なるほどね」