つれない男女のウラの顔
昔から緊張するとよく顔が赤くなった。その度に揶揄されるのが、とにかく嫌だった。
中には悪気なく「可愛い」と言ってくるヤツもいたが、当時はそう言われることにかなり抵抗があった。
好きでこんな体質になったわけじゃない。俺の顔が赤くなる度にいちいち反応するな。と、心の中はいつも荒れていた。
誰も理解してくれないし、いちいち説明するのも面倒くさい。疲れるだけだから、なるべく人と関わりたくない。
次第にそういう思いが強くなり、小学校低学年の頃にはひとりで行動することが増えた。
けれど赤面している時を除いては、周りに「イケメン」と言われることが多く、そのせいか、何もしなくても自然と人が寄ってきた。
たいして話したことがないのに友達ヅラするヤツもたくさんいた。すぐに群れようとする連中には毎日うんざりしていた。
しかもそういう奴らに限って、勝手に「頭が良さそう」「スポーツが得意そう」「何でも完璧にこなしそう」と理想を押し付ける。
それが後にプレッシャーとなり、更に人付き合いが苦手になった。“塩対応”と言われだしたのは、その頃からだと思う。
小学生の頃は人前で発表するだけで顔が赤くなっていたが、それは歳を重ねるごとに治っていった。慣れもあるが、緊張しないコツを覚えたからだ。
「目の前にいる全ての人間は“じゃがいも”若しくは“こけし”だ」
「俺の発表を真面目に聞いているやつなんて殆どいない」
そう自分に言い聞かせている内に、赤面する回数は減っていった。
ただ俺には、未だどうしても慣れないものがひとつだけある。
それは“女”だ。