つれない男女のウラの顔
花梨に触れたのは、あのデートの日以来だ。たった一週間なのに、その時間が酷く長く感じた。
ずっと求めていた彼女が、今俺の腕の中にいる。もう二度と離したくないと、強く思った。
一ノ瀬との電話のあと部屋を飛び出した俺は、いつ花梨とすれ違ってもいいようにと、車は使わず走って駅まで向かった。
すれ違う男女二人組を見付けては、花梨じゃないかと確認した。だが彼女らしき人物はいつまで経っても見付けられない。外から店内の様子が見える飲食店を気にしながら進んだが、結局花梨の姿はどこにもなかった。
どれくらいの時間そうしていただろうか。気付くと空は真っ黒な雲に覆われていて、心做しか雷の音も聞こえていた。さすがに徒歩で回るのは厳しいと判断した俺は、一旦車を取りに戻ることにした。
けれど、アパートまであと少しのところで間に合わず、結局雨を浴びてしまった。すぐ近くのコンビニで休むことも考えたが、そのまま足を止めなかった。
そして後に、その判断が間違っていなかったことに気付く。
「あれは…」
アパートのエントランスで耳を塞いで立っている人物を見付けて息を呑んだ。
「───花梨!」
大きな声を出すのは、いつぶりだろう。
一目散に駆け寄り、大雨のなか外に飛び出そうとしていた彼女の手を慌てて引いた。