つれない男女のウラの顔

手を繋いだままアパートの階段をのぼる。そうしている間も、雷の音はずっと響いていた。その度に花梨の体が反応するから、やはり怖いのだろう。


「雷、大丈夫か?」

「はい、旭さんがそばにいるので、何とか。私いまものすごく浮かれているんです。だから、雷の音があまり気にならないみたい」


なんだそれ。無自覚に煽られてる?いちいち言うことが可愛いくて困るんだが。

浮かれているのは俺も同じだ。いまは何を言われても抱き締めたくなるからやめてほしい。

いい歳して、ひとりの女にここまで夢中になると思わなかった。とりあえず平常心だ。ここは一応外なんだから。


「…旭さん」

「うん?」

「旭さんは以前、恋愛に興味がないと仰ってましたけど…どうして私を彼女にしてくださったんですか?」

「…正直、自分でもよく分からない。でも京香と一緒にいる時間が長くなればなるほど、もっと一緒にいたいと思うようになっていた。そばにいないと落ち着かなかった。少しずつ京香に惹かれていたんだと思う。心から付き合いたいと思ったのは、京香が初めてだ」


素直に答えると、花梨は「嬉しい」と頬を緩めた。そんな彼女を見て、思わず俺も顔が綻んだ。


「そういうのに興味がなかったというよりは、そう思える相手に出会っていなかっただけなのかもしれないな」


4年前とは違う。相変わらず恋愛というものには向いていないと思うが、それでもそばにいたいと思った。

そう思える相手に、出会ってしまった。
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