つれない男女のウラの顔
顔、赤くないか?
赤く染まっている頬を捉えた瞬間、とてつもない既視感を覚え、思わず凝視してしまった。まさかこの女も、俺と同じ体質なんじゃないかと。
「君もそういう顔をするんだな」と声を掛けたのは無意識。気付いた時には心の声が漏れていた。
いやいや、君もってなんだ、君もって。相手は俺のコンプレックスのことを知らないんだぞ。
しかも自分から話しかけるとか、らしくない。いつもの俺なら絶対にスルーしているのに。
挙句の果てに、赤面の理由は酒に弱いだけっていう。無駄に話しかけるんじゃなかった。ダサすぎてテンション下がる。もともと低いけど。
てか、いいよな女は。顔が赤くなったところで違和感なんてないのだから。
まぁどうせ、この先仕事以外で関わることはないだろうし。適当に上司らしいこと言ってさっさとここを立ち去ろう。
──そう、この先仕事以外で関わるつもりなんて、1ミリもなかった。
それなのに、隣に越してきただけでなく俺の秘密を握るとか本気で勘弁してほしい。あの時のことを思い出すと、未だ絶望感に襲われる。
あれは完全に事故だったが、彼女を思いっきり抱き締めてしまい心臓が止まるかと思った。
苦手な不意打ち。至近距離に女。
彼女のにおいが鼻腔を擽った瞬間、一気に顔が熱くなった。
やばいと思った時にはもう遅く、花梨が俺の顔を見て驚いた顔をしていた。俺の秘密がバレた瞬間だった。
ただひとつ気になったのは、花梨の顔も同じ色に染まっていたこと。
もしかして、やっぱり花梨も……?