つれない男女のウラの顔
再び落ちてきたキスはさっきより性急で、成瀬さんの“男”の部分を感じた。組み敷かれた体勢のせいか、抗うことも出来ずただ受け止めることしか出来なかった。
「ベッドに移動しようか」
酸欠で頭がぼーっとする中で聞こえてきた声に、反応する前に身体が宙に浮いた。成瀬さんに抱き抱えられたのだと気付いた瞬間、思わず変な声が出そうになった。
「…あ、旭さん…っ、おろしてください、自分で歩けますから!」
「今更何も気にすることはないだろ。ベッドまで運ぶのはこれで2回目なんだ」
2回目……やっぱりあの日、寝落ちした私を成瀬さんがベッドまで運んでくれたんだ。最悪だ、重かっただろうに。
落ち込んでいる間にベッドに着いたようで、そのままゆっくりおろされ、シーツに身体を預けた。私を見下ろす成瀬さんの視線は熱く、いつも以上に妖艶で思わず息を呑む。
きっとこのまま抱かれるだろう。そんな空気が漂っている。
「…もう少し、部屋を暗くしてほしいです」
いくら天気が悪いといっても、真昼間だけあって窓から差し込む光が明るく感じた。さすがに何もかもが丸見えの状態では心臓が持たない気がして恐る恐るお願いすると、彼はすぐにカーテンを閉めてくれた。
だいぶ部屋が暗くなってほっとしたけれど、この緊張が解けることはない。
「京香」
再び唇を奪われ、身を委ねるように目を閉じた。成瀬さんにも聞こえてしまいそうなくらい、心臓が大きな音を立てている。
啄むようなキスを繰り返していると、成瀬さんの手がゆっくりと服の裾から侵入してきた。彼の熱が直接肌に触れ、ぴくんと身体が揺れる。
「顔、見せて」
真っ赤になっているであろう顔を咄嗟に隠すと、あっさりとその手を取られ、シーツに縫い付けられてしまった。
「…尋常じゃないくらい顔が熱いです。引かれそうなくらい赤面している気がして…」
「引くわけないだろ。てか俺たちの共通点なんだから、恥ずかしいことなんか何もない」
分かってる。分かっているはずなんだけど、全てがキャパオーバーで頭が働かない。
成瀬さんに触れられているお腹あたりがくすぐったい。たったこれだけのことで頭が真っ白になっているのに、これ以上先に進んで大丈夫なのだろうか。