つれない男女のウラの顔

赤く染まった頬にキスが落とされる。それと同時にお腹あたりにあった成瀬さんの手が、肌を伝いながら上に移動してきた。

成瀬さんの熱を感じながら布団のシーツをぎゅっと握り締めていると、彼の手が遂に膨らみに触れた。

はじめはブラの上から触れていたけれど、程なくしてその手は隙間から侵入してきた。直接胸に触れられ、ゆっくりと揉まれたかと思うと、彼の指先がある所に触れた瞬間電気が走ったようにビクッと身体が反応して、声にならない声が出た。


「京香、本当に大丈夫か?」


成瀬さんの問いかけに、こくこくと首を縦に振ってみせるけど、緊張で身体はガチガチで、正直全然大丈夫じゃない。成瀬さんに触れられていると思うと余計に。

私はいま、あの男らしい骨ばった手に翻弄されている。近いようで遠い存在だと思っていた彼とベッドの上で戯れている現実に、頭がついていかない。

でも決してやめてほしい訳じゃない。怖いはずなのに、身体は彼を求めている。

心地いいキスがもっと欲しい。もっと彼の熱を感じたい。

どんどん欲張りになっていく自分がこわい。


「…ふっ……ん、」


時折先端を刺激されて、甘い声が漏れる。本当に私のものなのかと疑いたくなるような声に戸惑いを隠せなかった。


「あ、さひ…さん、」


もう何が何だか分からなくなって、無意識に彼の名前を呼んでいた。経験したことのない快感と羞恥で、生理的な涙が目尻に溜まっていく。


「京香」


耳元で名前を囁かれ、シーツを掴んでいた手を彼の首に回した。彼の手は、次はどこを攻めてくるのだろう。そう考えただけで身体がぞくりと震える。


───けど


「…やっぱり今日はこのくらいにしておこうか」


あっさりと熱が遠のき、呆気に取られた。
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