つれない男女のウラの顔
「…その話は、また後日ゆっくりしてもいい?」
成瀬さんのことを相談したのは3日前。たったの3日間で、簡単には語れないほど色々なことが起こった。
だからマイコには改めて報告しようと思っていた。本当は今すぐ伝えたいけれど、ここだと少し人の目が気になるから。
「もちろんいいわよ。また飲みに行きましょ。今週は推し活で忙しいから、来週くらいで…」
来週…か。今日か明日くらいにでも飲みに行けたら、ついでに今の悩みも相談しようと思っていたのに。
「ねえマイコ」
「うん?」
周りを一旦見渡して、近くに人がいないことを確認してからマイコの耳に顔を近付けた。今からする話の内容は、誰にも聞かれたくないから。
「…せ、精力剤…って、どこに売ってる?」
もしもの時のために、念の為情報を仕入れておこうと思ったのだけれど、マイコから返ってきたのは「は?」の一言。
「若しくは、男性を興奮させる下着とか…」
「うん、ちょっと一旦落ち着こうか」
一度私と距離を取ったマイコが、怪訝な表情で私を見下ろす。若干怒っているようにも見えるから、真昼間から過激な話をしてしまったことを反省した。
「あなたまさか、色仕掛けで相手を堕とそうとしてる?」
「え」
「やめなさい。京香のような恋愛初心者が、簡単に手を出していい技ではないわ」
既に付き合っているから、堕とすという表現は何となく違う気もするけど…そうか、私みたいな初心者にはレベルが高すぎる内容だったか。