つれない男女のウラの顔
「ちなみに俺はカルーアミルクとか好き」
「へ、へえ…」
浮気くんがいるから成瀬さんに話しかけられそうにない。そのためすれ違いざまに軽く会釈した。
──その直後、彼の手が一瞬だけ私の体に触れた。誰にもバレないくらいに、さりげなく。
不意打ちの彼の熱に心臓が大きく跳ねた。体温が一気に上昇して、慌てて俯く。
振り返りたいのに出来ない。もどかしい。
「場所分かる?一緒に行く?」
「だ、大丈夫。マイコと一緒に行くし」
「マイコ?」
「八田マイコ…」
「ああ、八田かあ。キャラ全然違うのに仲良いんだ?今日は花梨さんの意外な一面が発見できてラッキー」
それにしても浮気くんはよく喋る。
私はこの火照った顔をどうにかしたい。早くトイレに逃げたいのに、浮気くんはまだ私を解放してくれそうにない。
「でも同期会に参加して、彼氏は大丈夫?」
「…え?!」
浮気くんの口から突然“彼氏”というワードが出てきてぎょっとした。
なんで彼氏ができたって知ってるの。昨日の出来事なのにどうしてバレたの。
「か、かかか彼氏…?」
「あれ?少し前に花梨さんに彼氏がいるって噂を聞いたけど、デマだった?」
「……あ」
そうだ、思い出した。私が石田さん事件の時、そういう設定になったんだっけ。
びっくりした。成瀬さんとのことがバレたのかと思った。
安堵する私に、浮気くんは「彼氏、嫉妬しない系?」と続けて口を開く。
「そういうの嫌がる相手もいるじゃん。まあ俺は彼女に行くなって言われても行くけど」
成瀬さんはどうなんだろう。嫉妬なんてするのだろうか。
そういえば昨日、匠海くんには嫉妬していたような気もするけど…同期会に行くなって言うほど束縛が激しい人には見えないな。