つれない男女のウラの顔
「…なんだか、私ばかりしてもらってて申し訳ない気が…」
「そんなことはない。こう見えて俺も結構やばいんだ」
こんな時でも余裕があるように見えるけれど、実際はそうでないらしい。「京香が可愛すぎて理性がぶっ飛びそうなのをずっと我慢してる」と続けた彼は、微かに苦しそうな表情を見せた。
「いま京香に何かされたら、完全に理性を失う」
「我慢しないでって、言ったのに」
「最初なんだ。嫌な記憶は植え付けたくない。大切に扱いたいから」
「…でも私は、そろそろ旭さんと…つ、繋がり…たいです…」
思わず本音を零すと、成瀬さんは「なんで煽るんだよ」と小さな溜息を吐いた。
徐に私から体を離した彼は、着ていたシャツを脱ぎ捨てた。突如顕になった引き締まった上半身を見て息を呑む。
その体に釘付けになっている間に、彼はベッドサイドチェストからアレを取り出した。初めて間近で見た箱にドキドキしていると、ベルトを緩めた彼が「そんなに見るな」と頬を赤らめた。
慌てて両手で顔を隠したけれど、どうしても気になってアレを付けている様子を指の間からこっそり覗いた。
…まって、本当にあれを挿入るの?
「痛みを感じたらすぐに言うんだぞ」
「は、い…」
再び私を組み敷いた成瀬さんは、自身をゆっくりと私に当てがった。
まだ入口付近に触れただけ。よく濡れているのか、滑りは良さそうな気がする。
だけど挿入る前から既に痛い気がしてくる。だって、さっき見たのは明らかに指とは比べものにならないサイズ感だったから。
途端に不安になって、縋るように成瀬さんの背中に手を回した。全身に力を入れ、無意識に呼吸を止めた。
「京香」
成瀬さんの穏やかな低い声が鼓膜を揺らし、ハッとする。
「好きだ」
「…え?」
「初めてを俺にくれてありがとう」
「…あさ…ひさん…」
「ゆっくり、少しずつすすめよう。怖かったら言って。京香の不安がなくなるまで待つから」
突然の告白と、私の気持ちを汲み取ってくれたかのような言葉は、まるで魔法のようにこの不安を一瞬で消してくれた。