つれない男女のウラの顔
「今度ちゃんと俺に会わせろよ。実はまだ花梨さんと直接喋ったことないんだ」
「…バカがうつりそうで心配だ」
「え、いま何て言った?絶対悪口言ったろ」
「間違えても“25歳の時にこの会社を辞めて暴走族の総長になろうとした二輪走太です”って自己紹介するなよ」
「お、おいばか、俺の黒歴史をサラッと暴露するんじゃねえ!あれは若気の至りってやつで、すぐ我に返ったからセーフなんだよ!ちゃんと“嫁命の二輪走太です”って言うに決まってるだろ!」
この男と喋っていると本当に疲れる。この短時間で一気に体力を削られた。こういう時、無性に京香に会いたくなる。癒しがほしい。
でも残念ながら、今晩は例の同期会の日だ。確かビアガーデンに行くと言っていたな。まあ俺もどうせ残業なのだが。
隣の部屋ではあるが、こういう時に“同棲していたら”と考えてしまう。
付き合って間もないというのに…俺もなかなか重い男なのかもしれない。
「なあ、もし今日も花梨さんに会うなら、俺の話をしておいてくれよ。“俺らのキューピッド二輪走太が、お前に会いたがってたぜ”ってな」
「残念ながら今日は会わない。向こうは同期会があるらしい」
「同期会?珍しいな、花梨さんって飲み会には参加しないイメージなのに」
「初めて参加すると言っていた」
「へえーそれは心配だな?酔っ払いに絡まれたりして」
うるさいな。気にしていることをいちいち言うな。浮気ってやつがいるだけでも嫌なのに。
「……ん?待てよ、それってビアガーデンだったりする?」
「…え?何でそれを…」
「さっき石田が言ってたんだ。後輩がビアガーデンに行くから、自分もちょっと顔出すって」
「…………は?」
「あいつ確か花梨さんのこと狙ってたよな。石田は花梨さんが参加することは知らないのかもしれないけど…」
………………は??