つれない男女のウラの顔
「ちょっとお…あなた達カップル何なの…?成瀬さんってこんなキャラなの…?最高過ぎない…?」
マイコがうっとりした目をしながら私達にスマホのカメラを向けてくる。これが推し活というやつなのだろうか、カシャカシャとシャッター音を鳴らしながら「めちゃくちゃ推せるわ…」と独り言を呟いている。
そんなマイコを余所に私は絶賛テンパり中だ。成瀬さんの急な行動に頭がついていかない。まさかこんなに早く私達の関係がバレると思っていなかったから、慌てて成瀬さんの耳元に顔を寄せる。
「え、ちょ、成瀬さん…今のでみんなにバレましたけど、大丈夫なんですか?」
「言っただろ。別に隠す必要はないって」
「そうですけど、でも…」
好奇の目を向けられるのは鬱陶しいって言っていたのに。
「どうせ石田にもバレたし、変に隠すのも面倒かと思って。それにいつかは知られることだし、堂々としていた方が楽な気がして。もしかして迷惑だったか…?」
「い、いえ、そんなことは…」
むしろ嬉しいとさえ思っている。でも、この状況が恥ずかしくてたまらない。同期達に見られながら、成瀬さんとコソコソ話をしているこの状況が。
女性陣は黄色い声を上げながらこちらを見ている。周りの視線を感じて、一気に顔が熱くなる。
赤面しているところを見られたくなくて、咄嗟に成瀬さんの後ろに隠れた。成瀬さんの言った通り堂々としていた方が楽なのかもしれないけど、成瀬さんは少し堂々とし過ぎでは?
「このまま彼女を連れて帰ってもいいか?」
「どーぞどーぞ。またね、花梨さん」
笑顔で手を振る浮気くんに会釈すると、成瀬さんは私の腰に手を添え、踵を返した。
その直後、遠くから怯えた顔でこちらを見ている石田さんと目が合った。
「いやーほんと推せるわー」
「花梨さん帰っちゃったし、八田さんは二次会参加ってことでいい?」
この後、二次会に参加したマイコと浮気くんは私と成瀬さんの会話で盛り上がったらしい。