つれない男女のウラの顔
幼い頃はやんちゃな男子達によくからかわれた。
“リンゴ”や“トマト”って呼ばれるのはまだ可愛い方。人前で発表する度に顔を赤くすれば、クラスメイトに嘲笑された。
小学生の頃、慣れない男子に話しかけられ思わず赤面すると、好きになったと勘違いされ周りに冷やかされた。なんなら、好きでもなければ告白もしていない男子に一方的にフラれたこともある。
それからは男子と関わるのが特に苦手になった。
けれど全く関わらないなんて絶対に無理な話で。苦手だと思えば思うほど、勝手に顔が赤くなる。
そのせいで中学の時は、男子の前で赤面する私を見て、クラスの派手な女子に“あざとい”と陰口を叩かれた。それが今もトラウマで、女友達を作るのも苦手になった。
このように、過去の経験から誰も信じられず、心を閉ざし、人と関わることを避けているうちに“一匹狼”と言われるようになった。それが28歳になった今も続いている。
両親は赤面する私を見て「可愛い」と言うけれど、この体質にいい思い出なんてひとつもない。
裏表がないなんて嘘。私はただのコミュ障。ウラの顔は、クールでもなければかっこよくもないのだ。
品質管理課を希望したのも、検査の時はマスクをつけていられるから。不意に赤面した時に、あるのとないのでは全然違うもの。
もちろんマスクをつけずに行える作業もたくさんあるのだけれど、“着脱が面倒だから”という理由で社内では常にマスクをしている。
もはやマスクが私の安定剤みたいになっている。