つれない男女のウラの顔

「成瀬さんは私に比べたら異性に慣れていそうですよね」


いくら女性を寄せ付けないと言っても、女性社員にもあれだけ人気があれば、嫌でも免疫がつきそう。表面上は塩対応で無愛想かもしれないけど、心はとてとあたたかい人だ。きっと学生時代もモテたに違いない。

私が隣の部屋に越して来た日、誤って彼の胸に飛び込んだ時の反応は、明らかに女性慣れしていない感じだったけど、今日の対応はスマートで真摯だったから。


「そんなことはない。むしろ花梨と同じで苦手だ」

「そうなんですか?」

「男ばかりの環境で育ったからな。兄弟も男ばかりだし、中学から男子校に通っていたから女と関わることがなかった」


びっくりした。成瀬さんが自分の話をしてくれるとは思わなかったから。


「成瀬さんのご兄弟…ちょっと気になります。皆さんクールで?」

「兄がふたりいて、顔は似ているらしいが、ふたりともクールどころか俺と違ってよく喋るから賑やかだよ」


うわあ、すごい。成瀬さんの顔でワイルド…全然想像出来ないや。遠くからでいいから見てみたい。

成瀬さんが優しい心の持ち主なのは、きっとあたたかい家庭で育ったからなんだろうなあ。


「男子校だと、女性と接する機会はあまりなさそうですね」

「そうだな。どうしても女と絡みたいやつは合コンとかしていたらしいが、俺は大勢で行動することが好きではなかったから。気の許せる友人は数人いるが、だいたいいつもひとりだった」


いつもひとり…私と同じだ。成瀬さんといると心地いいのは、そういうところも似ているからなのかな。波長が合うのかも。

先日、肉バルで一緒にいた人達は“気を許せる友人”だったのだろうか。
なんでだろう、もっともっと成瀬さんのことが知りたくなってしまう。
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