つれない男女のウラの顔

「だから俺も、女に免疫はない」


てことは、成瀬さんは今まで彼女ができたことはないってこと?こんなにも端正な顔立ちをしているのに意外だ。


「でも成瀬さんってモテますよね」

「表面だけで判断されて、本当にモテるというのかは謎だが。俺の中身も知らずに、迷惑な話だよな」


もしかしてそれが成瀬さんが女の人を寄せ付けない理由なのかな。心を開いていない相手に好意を持たれても、確かに嬉しくはないかも。

だけど成瀬さんの中身を知れば、みんな成瀬さんに惹かれると思う。きっと今以上にモテるはず。


「成瀬さんは彼女がほしいとは思わないんですか?恋愛がしたいなーとか」

「ないな」


キッパリと言いきった彼は、続けて「今どき未婚も珍しくないだろ」と呟く。


「既に一生独身の覚悟が出来ているんですね」

「今までも女がいなくて困ったことはないし、仕事にも集中出来る。それにマメなタイプでもないしな。女はそういう男を嫌うだろ」

「そう…なんですかね」


友達がいないから分からないけど、確かにマメな人の方がモテるのかな。

マイコは「顔が強ければいい」しか言わないから、あまり参考にはならないし。というか推しにしか興味がないから、人の恋愛話は好きだけど自分は恋愛をしている余裕がないと言っていた。

まあ人それぞれだよね。でも…


「成瀬さんは、良い旦那さんになりそうですけどね…」

「ひとりが楽なんだよ。誰かと一緒に住むのも考えられない」


成瀬さんの言葉に、ハッとした。そして箸を持ったままソワソワし始める。


「…私、やっぱり石田さんに鍵を返してもらってきましょうか…?」


突き放された気がして、途端に寂しさを覚えた。それと同時に罪悪感が押し寄せてくる。
やっぱりこの部屋にお邪魔するべきではなかったんじゃないかと。


「え?ああ、悪い。そういう意味で言ったんじゃない。今日はここにいればいいから」

「でも…」

「大丈夫。花梨との時間は苦痛に感じない」


けれどすぐに引き止められてホッとしている自分がいた。それどころか受け入れてくれるのが凄く嬉しかった。

男性は苦手なはずなのに…こんな感情を抱くのは、成瀬さんが初めてかもしれない。
胸がきゅっと熱くなるのは、どうしてだろう。
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