つれない男女のウラの顔

今の生活は時に寂しさを感じるけれど、反対にいえば平穏で、特に不自由もしていなくて。

でも楽しそうに会話している同僚を見ていると、たまに社会から取り残されている気持ちになる。


だけど一応、こんな私にも社内にひとり唯一心を開ける同期がいる。彼女の存在が私にとっては大きくて、とても心強い。

…あの子、今晩暇かな。飲みに誘ってみようかな。


そんなことを考えている間に顔の熱は引いていた。そしてふいにポケットのスマホが小さく震え、こっそり画面を覗くと、1件の新着メッセージが入っていた。


“今晩、飲みにいかない?”


噂をすれば、唯一の友人マイコからお誘いだ。私も丁度声を掛けようと思っていたため、思わず頬が緩む。


“いく。私もマイコと飲みたい気分だった”


速攻返信すると、うさぎが飛び跳ねて喜んでいるスタンプが送られてきた。それを見て、耐えきれず「ふふ」と笑い声が漏れた。

再び鏡で自分の顔を確認しても、さっきまでの赤みはどこにもない。安堵の息を吐いた私は、スマホをポケットに入れ、そのまま女子トイレを後にした。


< 7 / 314 >

この作品をシェア

pagetop