振り向いて、ダーリン!
目の奥に残る赤い熱に浸っていると、彼はそう言った。
私を見つめる、優しく微かなその笑顔に、また胸が苦しくなる。
「うん……」
誰かといて、こんなに落ち着くのは初めてだった。
わん!とわんちゃんがひと吠えする。
家の方に、彼を引っ張っているみたい。
「…朝焼けも綺麗だぜ」
「あ、そうなんだ……」
「夏の日の出は、あんまり見た事ないけど」
「ふふ。私も、朝弱い」
彼はまた、私を見てかすかに笑った。
「朝焼けなら、7時過ぎくらいまで見れる」
そう言ってじ、と見つめる彼。
その瞳に、どこか見覚えがあった気がしたけど。
胸が苦しくなって、そんな思いもすぐにどこかへ行ってしまった。
「…じゃあ、明日も来ようかな」
「……ん」
「あなたは?」
「俺、こいつの散歩あるから」
やった。
と、軽率に喜んでしまう。
「じゃあ、また明日」
自転車のベルを鳴らす音が聞こえてきた。
多分じいちゃんが、私をむかえにきたんだろう。
「……送る」
「ううん。迎え、来たから」
音の方をむくとやはりじいちゃんが来ていて、彼は納得したようだった。
「気をつけてね」
「うん。じゃあ」
そう言って別れて、明日が楽しみなのは、本当に久しぶりのことだった。
「じいちゃん、明日絶対6時に起こして」