振り向いて、ダーリン!
橘 いなせ(16)、高二。
高校での怒涛のような人間関係にうんざりして、ただいま避暑地にて休養中です。
「いなせ、すいか」
癇癪持ちの母を産み、育てた人物とは思えないほどに、祖父母はおしとやかだ。
歳を食って丸くなっただけかもしれないけど。
押しかけるように、大量の荷物を持って尋ねた私を、何も言わず笑顔で迎えてくれた。
必要な時以外は無闇に話しかけてこない、私の理想の大人たちだ。
「ありがとうばあちゃん」
歳の割にしっかりしてるばあちゃんは、ばかでかいお盆を持って静かに私の部屋(仮)を訪れた。
うわ、でっっっか、すいか。
え、これ何人分?五人のお腹を空かせた力士が食べる量だよね、完全に。
いただきます、と手を合わせて、ありつく。
「ん〜、染みるね」