振り向いて、ダーリン!
しゃくしゃく、しゃくしゃく。
今までの人生で、こんなに美味しいすいかは無い。
私に当てられた部屋は和室で、日差しの暖かな縁側は畑に面しており、見渡す限りなにもない。
裏に行けば何軒か家があって、綺麗な川もある。
畳におかれた丸机は大きく、先程適当に手をつけていた宿題を広げっぱなしだ。
教科書が、風鈴の音に合わせてパラパラとめくれる。
都会と違い、電気などつけなくても夕方の柔らかな太陽光で満ち溢れたこの部屋が私は大好きだった。
ーーぴろん。
しばらくすいかを食べ続けていて、その音に顔を顰めた。
「……こっちは切ってなかったか……」
全てのSNSの通知を切ったつもりが、漏れがあったようだ。
なるべく画面を見ないようにしながら、ケータイの電源を切る。
やっぱりこれが一番手っ取り早いな。
じいちゃんの趣味の古本たちが並べてあるスライド式の本棚の中に、スマホを突っ込んだ。
す、と閉じて、できあがり。