振り向いて、ダーリン!



ふと、みんなの怒鳴り声や甘ったるい匂い、冷たい瞳が蘇った。
ずき、と頭が痛む。


「……散歩行くかぁ。すいかも、食べきれないし。お腹空かせなきゃ」


裏から出て、川の方に行こう。
もうすぐ夕焼けだから、きっと綺麗だぞ。


よれたTシャツがずれ、肩が出るのも気にせず歩く。
靴下を履いてなかったので、適当なサンダルを履いてきたのだが、砂利道は案外歩きにくかった。


さわさわと心地よい稲穂の音の中を、砂利を踏みながら歩く。


川は前に来た時より整備されているらしく、土手のようになっていた。
それをのぼり切り、雄大に流れる川が見えたところで、私は感嘆する。


夕焼けだ。
思っていた何倍も、美しい。


「きれー…」


声に出さずにはいられなかった。
この自分の声を聞いて、私の心の痛みが和らいでいるのを実感した。


柔らかい緑色の草の上に座る。
風は案外涼しくて、首元に張り付く髪を撫でてくれた。

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