振り向いて、ダーリン!
「あ……あの……ありがとうございます。どうも、助けてくれて…」
顔を見上げ、お礼を言う。
しかし、その人は仏頂面だった。
私は固まる。
川の岸辺に生える木に止まっているであろうセミの鳴き声と、足元で大人しくしているわんちゃんの息遣いだけが聞こえていた。
「……えっと…」
やばい。
私は人見知りです!!
それでも何も出来ず、固まっていると、彼はす、と手を伸ばした。
私の反応を待つこともせず、私の頬に触れる。
その手は、私の濡れたところをなぞっていた。
……ぬぐってくれてるのか?
不機嫌そうな顔とは裏腹に、その手つきはとても優しい。
呆然と、されるがままにしていると、気が済んだのか彼は手を引っ込めた。
「……ありがとう」