振り向いて、ダーリン!



なんだか小っ恥ずかしくなってきた私は、はにかみながらお礼を言った。
彼はまたむ、と顔をしかめる。


え、ありがとうが嫌な人?


彼は黙って土手に座った。
わんちゃんもいい子にその横に座る。


えっと……。


「ん」


彼は振り向いて、わんちゃんが座ってない方の自分の隣を、ぽんぽんと叩いた。
……かわいいな。


「…失礼します」


遠慮なく座らせてもらう。
もともと、私が座ってたし?


それから、しばらく沈黙が続いた。
いつもなら、耐えかねて何が話題を振るけど。


なんだかこの時間が、心地よかった。


膝を抱えるけど、ちっとも惨めじゃない。
ちらりと様子を伺うと、彼は憂え気に夕焼けを見つめている。


その姿に、胸がぎゅ、と苦しくなった。
……?


時間だけが動いているみたいで、それからしばらく後に、夕焼けは山の向こうに消えた。


「……綺麗だろ」

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