ラピスラズリ ~前世の記憶を思い出した伯爵令嬢は政略結婚を拒否します~

しばらくしてお医者様から処方したお薬が届いた。

頭が打った時によいというお薬と落ち着いてよく眠れるお薬を飲んで、ベッドに潜り込む。


「何かあれば呼びますから、アイシャもきちんと眠りなさい」
と声を掛けて目を閉じた。



そういえば・・・。

隣国への留学から戻られてきたモンロー公爵家の次男をベルナルド様が側近になさったというのはルーカス様のことだったのね。

2年もベルナルド様の所へ通っているが、ルーカス様とこんなに近くで会い、言葉を交わすのは初めてだわ。

きっとベルナルド様と会う機会が少なすぎたせいね。


ルーカス様の見た目は瑠伽とは違ったけれど、声は瑠伽と同じだった。


瑠伽は綺麗な二重の猫目。
細くて高い鼻筋。柔らかな唇。
時折見せる片方の口端だけをきゅっとあげる仕草は、いたずらっ子のようにかわいらしいところがあった。

身長は179センチ。
細身のスーツが似合うホテルマンだった。
目がすっぽり隠れるくらいの長さの前髪は、仕事中は黒髪をオールバックに整え、普段は左右に軽く流していた。

私は寝起きなのにさらさらな前髪の隙間から見える目が好きだった。



一方、ルーカス様の瞳は少し垂れ目でくっきりとした二重。
濃く深いブルーの瞳。
鼻筋が通っていて、唇は少し薄め。

背はとても高く、肩幅も広い。
騎士程ではないけれど、程よく筋肉もついていて、腰の位置が高い。
髪はストレートで細く輝き、背中の中程まで長く、低い位置で1つに結わえている。

美男子と評判のベルナルド様の隣に立っても、見劣りどころか優劣つけがたいほどの美しい外見をしている。


そして、声。
驚くことに、二人の声はとてもよく似ている。
低くてよく通る美声。
艶のある甘い声。


仕草も似ているところがあった。
付き合う前、瑠伽の仕事中の真剣な表情とか、何を考えているのかと瞳を覗き込んでくる時の目とか、考える時に拳を口許にやるとことか。ほんの少ししかお会いしていないにも関わらず、ちょいちょいよく似ていた。


もしかして、私が奏音の生まれ変わりと同様に、ルーカス様は瑠伽のうまれかわりなのかもしれない。そのくらい雰囲気の似た二人。


瑠伽のことを考えると胸がキュンと音を立てた。
瑠伽・・・・。



どうしてこのようなタイミングで思い出してしまったのでしょう。

私はベルナルド様の妃になるために日々過ごしているというのに。

もし、ベルナルド様の側近が本当に瑠伽だったとしたら…。

私は再び瑠伽に恋をしてしまうのだろうか?

もし…もし…もし…。

私は瑠伽とルーカスのことを考えながら次第に眠りに落ちていった…。




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