ラピスラズリ ~前世の記憶を思い出した伯爵令嬢は政略結婚を拒否します~
第1章
<空から王子が降って来た!?>
「はあ~」
大きな鏡に映る自分を見つめて溜息をついた。
ここは王城内の父の執務室にある個室。
私は専属メイドのアイシャに化粧直しをされている。
「カノン様、口紅をひきますから、動かないでくださいね」
「はいはい」
私の名はカノン・ローゼット・ハウアー。
ハウアー伯爵家の長女である。
そして国王の弟であるベルナルド様の婚約者候補の一人でもある。
これからそのベルナルド様の執務室に、ご機嫌伺いに向かうための準備をしているところ。
…と言っても、執務室に行ったところで、今日もベルナルド様にお会いすることは叶わず、追い帰されるのだろうけれど。
今日の理由は「忙しい」かしら?それとも「接客中」?まさかの「ここにはいない」とか?
ベルナルド様の婚約者候補に名乗りを上げて5年。
3年間の王族教育を受けたのち、お父様の執務室で仕事をして2年がたつ。
その間、毎日の仕事終わりにはご機嫌伺いに足を運んている。けれど、ベルナルド様にお会いしたのは4回きり!2年間でたったの4回よ!?
これはもう、嫌われているとしか言いようがないわ!
それにも関わらず、私は懲りずに仕事を終えると、ベルナルド様の所に寄って帰宅するのだ。
私の行動も嫌がらせとしか言いようがないレベルのしつこさなんだけど。
私はもうすぐ18歳になる。それは所謂「適齢期を迎える」ということだ。
ベルナルド様は現国王の年の離れた弟君で、男性の適齢期である23歳をとっくに過ぎた25歳。にも拘わらず、まだ結婚する気はなさそうに見える。
おかげで私は周囲から婚姻を求められているのにも関わらず、結婚どころか、「婚約者候補」の一人のままで「婚約者」にすらなれていない。
元々ベルナルド様には相思相愛の婚約者様がいらっしゃった。けれど、5年前に事故で亡くなられてしまった。
ベルナルド様は未だその婚約者様の事を愛していらっしゃるという。
しかも、亡くなられてすぐに婚約者候補になった私の事を嫌っている。
まあ愛する人の死を喜ぶかのように婚約者候補の名乗りをあげる令嬢なんて、ごめんこうむりたいという心情はよくわかる。
だけどさ。
私だって、ベルナルド様に恋い焦がれているわけでもない。
ベルナルド様は、背が高く美形で細マッチョで、令嬢達からの人気はものすごく高い。
これは認めるわ。
でも、忙しいとか不在だとか言って全く会おうとしないベルナルド様に対して、どうしたら恋心を抱けるというの?
無理に決まってる!
それに弟が生まれるまでハウアー家の子供は私だけで、私はどこかの次男か三男あたりと結婚して婿をとってハウアー家を継ぐようにと幼い頃から教育を受けてきたのよ。
私だって物心ついた頃からそのつもりで勉強する毎日だった。
それなのに、お父様とお義母様との間に男児、つまり弟が生まれたので私は政略結婚の駒に成り下がったのだ。
その駒が嫁ぐのに最優良物件がベルナルド様というわけ。
私は伯爵令嬢だもの。政略結婚して当然だわ。
お婿さんを貰うのがお嫁に行くに代わっただけ。
わかってるわ、貴族の結婚なんてそんなものよね。
わかってるけれど…。
いくら好きでもない相手とはいえ、ここまで頑なに嫌われるのはつらいわ。
今日だって、王城で文官としてお父様の執務のお手伝いをした後に、ベルナルド様の所へご機嫌伺いに伺って、門前払いを食らって帰宅するのが目に見えるもの。
「はあ…」
虚しい…。虚しいなあ…。
大きな鏡に映る自分を見つめて溜息をついた。
ここは王城内の父の執務室にある個室。
私は専属メイドのアイシャに化粧直しをされている。
「カノン様、口紅をひきますから、動かないでくださいね」
「はいはい」
私の名はカノン・ローゼット・ハウアー。
ハウアー伯爵家の長女である。
そして国王の弟であるベルナルド様の婚約者候補の一人でもある。
これからそのベルナルド様の執務室に、ご機嫌伺いに向かうための準備をしているところ。
…と言っても、執務室に行ったところで、今日もベルナルド様にお会いすることは叶わず、追い帰されるのだろうけれど。
今日の理由は「忙しい」かしら?それとも「接客中」?まさかの「ここにはいない」とか?
ベルナルド様の婚約者候補に名乗りを上げて5年。
3年間の王族教育を受けたのち、お父様の執務室で仕事をして2年がたつ。
その間、毎日の仕事終わりにはご機嫌伺いに足を運んている。けれど、ベルナルド様にお会いしたのは4回きり!2年間でたったの4回よ!?
これはもう、嫌われているとしか言いようがないわ!
それにも関わらず、私は懲りずに仕事を終えると、ベルナルド様の所に寄って帰宅するのだ。
私の行動も嫌がらせとしか言いようがないレベルのしつこさなんだけど。
私はもうすぐ18歳になる。それは所謂「適齢期を迎える」ということだ。
ベルナルド様は現国王の年の離れた弟君で、男性の適齢期である23歳をとっくに過ぎた25歳。にも拘わらず、まだ結婚する気はなさそうに見える。
おかげで私は周囲から婚姻を求められているのにも関わらず、結婚どころか、「婚約者候補」の一人のままで「婚約者」にすらなれていない。
元々ベルナルド様には相思相愛の婚約者様がいらっしゃった。けれど、5年前に事故で亡くなられてしまった。
ベルナルド様は未だその婚約者様の事を愛していらっしゃるという。
しかも、亡くなられてすぐに婚約者候補になった私の事を嫌っている。
まあ愛する人の死を喜ぶかのように婚約者候補の名乗りをあげる令嬢なんて、ごめんこうむりたいという心情はよくわかる。
だけどさ。
私だって、ベルナルド様に恋い焦がれているわけでもない。
ベルナルド様は、背が高く美形で細マッチョで、令嬢達からの人気はものすごく高い。
これは認めるわ。
でも、忙しいとか不在だとか言って全く会おうとしないベルナルド様に対して、どうしたら恋心を抱けるというの?
無理に決まってる!
それに弟が生まれるまでハウアー家の子供は私だけで、私はどこかの次男か三男あたりと結婚して婿をとってハウアー家を継ぐようにと幼い頃から教育を受けてきたのよ。
私だって物心ついた頃からそのつもりで勉強する毎日だった。
それなのに、お父様とお義母様との間に男児、つまり弟が生まれたので私は政略結婚の駒に成り下がったのだ。
その駒が嫁ぐのに最優良物件がベルナルド様というわけ。
私は伯爵令嬢だもの。政略結婚して当然だわ。
お婿さんを貰うのがお嫁に行くに代わっただけ。
わかってるわ、貴族の結婚なんてそんなものよね。
わかってるけれど…。
いくら好きでもない相手とはいえ、ここまで頑なに嫌われるのはつらいわ。
今日だって、王城で文官としてお父様の執務のお手伝いをした後に、ベルナルド様の所へご機嫌伺いに伺って、門前払いを食らって帰宅するのが目に見えるもの。
「はあ…」
虚しい…。虚しいなあ…。