ラピスラズリ ~前世の記憶を思い出した伯爵令嬢は政略結婚を拒否します~
「もし、私の婚約者候補から外れたら、間違いなくマルクスの婚約者になるぞ?」
「ですから、そこはベルナルド様にどうにかしていただきたいとお願いしたのです」
「それは・・・」

ベルナルド様が瞳を伏せ、何かを思悩された。
少しして目を開け、私をじっと見つめる。

「それならば、私の婚約者になるか?」
「は?」

何言ってるの?
婚約者候補から外してって言ったのに、真逆になってる!!

「え!?」
「ええ!?」
ガタン。
アイシャとルーカス様が音をたてて立ち上がり、声をあげた。

2人を放って話は続けられる。

「カノン嬢は結婚したくないのだろう?」
「はい」

「他に結婚したい人がいるわけでもないと」
「はい」

「それならば、私は婚約者候補をカノン嬢一人にしよう。
まずは婚約するまでの時間を稼ぐ。
その間にマルクスが他に好きな相手を見つけてくれれば婚約者候補から外そう。
見つからないようなら婚約者になり、結婚まで時間を稼ごう。
結婚するまでにはさすがに他の令嬢との婚約が決まっているだろうから、そうすれば私との婚約破棄をして結婚は白紙に戻そう。
どうだ?」

「・・・・」
「今婚約者候補から外れればマルクスが求婚してくるのは目に見えているし、そうでなくとも、他の貴族との結婚をまとめられるだろう」

確かに・・・。

「私との婚約破棄のあとはカノン嬢の就職先も斡旋しよう。
王族教育をしたのだから通訳としての仕事ができるのではないか?
他にしたいことがあるのなら、今のうちから準備を始めればいい」
「そうですね・・・・わかりました。
このままベルナルド様の婚約者候補になりますわ」

「ベルナルド様!「私も・・・」」

ルーカス様の声を遮り、ベルナルド様が言葉を続けた。

「私も結婚しろ、結婚しろとうるさく言われるのも面倒だったのだ。
安心しろ、結婚はしない。カノン嬢もそこは間違えるな」
「かしこまりました。決して間違えないと誓いますわ。
契約書も作りましょう」

「よし、契約成立だ」
「はい」

互いに力強く握手を交わした。

「というわけだ。
ルーカス、契約書を作ってくれ。
アイシャ嬢もこのことは他言無用だ」
「お願いいたしますわね」

微笑む私たちを見て、二人は頭を抱えるのだった。



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