ラピスラズリ ~前世の記憶を思い出した伯爵令嬢は政略結婚を拒否します~
そうと決まれば、近道、近道~。
お父様の執務室からベルナルド様の所へ行くには大階段のある広間を抜けて行くほうが近道なのだ。
「早歩き」という名の「小走り」で向かっている・・・・・と・・・。
「キャーーーー!」
突如、吹き抜けの上方から甲高い悲鳴がした。
見上げた私は飛び込んできた目の前の光景に驚き、焦った。
なんと、マルクス王子殿下が長い階段の上の手摺から御身を乗り出しているじゃないの!?
まだ8歳のマルクス王子は「危ない!危ない!」と慌て拭いためく侍女の姿を見て笑っている。
「あははは。分かったよ」
と笑う王子は器用に手すりの上に足をかけてよじ登っ・・・・た瞬間。
「うわあッ!」
「キャーーー!」
「あっ!!」
足を滑らした王子が宙を舞う!?
真上から王子が降って来る!?
私は反射的に体が動いた!!
「オーライッ!」
私は両手を広げて王子を見事にキャッチした。
「「「「「おおおおおおお!!!!!!」」」」」
という周囲の歓声が上がったと同じくして、王子の曲げた膝が顎に入った。
「うッ」
と唸り声を一つ上げ、私は意識を飛ばし、その場に倒れたのだった。
ドサリ。
「カノン様あああああああ!!!!!!!」
アイシャのとんでもなく大きな悲鳴が響き渡った・・・そうだ。