ラピスラズリ ~前世の記憶を思い出した伯爵令嬢は政略結婚を拒否します~
数日後。父の執務室にルーカス様が訪れた。
「『二毛作』とやらについて話を聞かせてもらいたい」
ということだった。

「私もあまり詳しいわけではないのですが」
と前置きをしたのち、受験勉強した内容を思い出しながら説明をした。

「海を挟んだ南国では年に2回、3回と収穫してはまた植えるということをしているといいますが、それは同じ作物で、です。
それでもその国では常に一定量の収穫があるのに対し、我が国内で同様に行ってもうまく育たないのはどうしてだとお考えですか?」

「うーん。そうですねぇ。
温かい土地柄で1年の寒暖差があまりないからではないでしょうか。
我が国のように夏暑く、冬は大雪が降るようなところで同じ作物を作るのは無理ですわ。
例えば、春にいもを植え、収穫後の秋に菜物を植えるなどがあったと思います。
どの種類がよいかはいくつか試してみて、相性が良い組み合わせかを知らべる価値はあると思います」

「なるほど、やってみましょう。それにしても・・・」
「?」

「カノン様はよく勉強されていたのですね」
「え?いえ。そんなことは・・・」

私だって勉強はしているけれど、この知識は奏音のものだからなあ。と返事に困ってしまう。

そんな私を見て、ルーカス様はふわりと微笑んだ。

あ・・・・。

その優しそうな微笑みに、瑠伽の笑顔を重ねてしまって、ドキッとする。

「時間をとらせてしまって申し訳ない。とてもよい話をうかがえました」
胸のときめきをそっと隠して、私も微笑んだ。
「お役に立てれたのでしたら、光栄でございます」


ルーカス様をお見送りして、私はアイシャに紅茶を入れてもらった。

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