黒聖女は今生では騙されずに一人で生きていく!…でも呪われた公爵様と結婚する事になってしまってます
黒聖女の最期
今日はきっと晴天だ。
王城では今日隣国との戦争の勝利宣言が行われ、祝祭を行う予定だと聞いていた。
彼らの為に、私は城の周りに雨除けの結界を張った。
大掛かりな魔術だが、勝利宣言をする数時間は、雲一つない青空が広がっているはずだ。
晴天の中、民衆にたたえられ誇らしげにする彼らが見たかった。
私は城の地下にあるらしい一室で、そのことを漠然と考えていた。
ここには窓などはなく、薄暗い中に魔術の光が控えめに灯るだけだ。
地下室の周りの空気は晴天をまったく感じさせない薄暗さで、じめじめと重い。べたりと肌に張り付くような湿度が気持ち悪い。
信じていた。
彼らの為なら、どんなにつらくても平気だった。
戦場では率先して最前線に向かった。
しかし、その想いは手の込んだ魔術陣と魔封じの魔導具、そして周りにいる魔術師で答えられた。
大がかりな魔術陣には、貴重な魔鉱石が至る所に配置されており、魔術陣自体も強大な魔力が込められているのを示すように、薄く光っている。
こんな場面でなければ、幻想的でとても素敵だっただろう。
この大掛かりな魔術陣は、城に居る優秀な魔術師がつきっきりに作成しても一カ月以上はかかるはずだ。
……最初から、こうする予定だったんだ。私が国の為に戦っている時から。
こんな風に魔封じに両手を拘束されていても、まだ信じられない。
涙が出そうになるのをぐっとこらえていると、コツリと足音が響いた。
「不可視の黒聖女と呼ばれる君も、こうなっては普通の少女の様だ」
「ヴァーラシス殿下……どうして」
嘲るような言葉と共に、ヴァーラシスが現れた。
貴族が私の事を見下したり遠巻きにしている中、彼は私に優しくしてくれた。
彼が居たから、戦場にいる間は皆が私を仲間として扱ってくれた。
いつも優しく名前を呼んでくれたのに、今の彼の声は冷ややかで感情が全くわからない。
一緒に戦争を勝利し仲間だと思っていた彼は、私の事を見下ろし、場違いなぐらい綺麗に微笑んだ。
「君の力は強大で、その為あっという間にあの大国に勝利することができた。とても、感謝している」
「だったら、なんでこんな事をするんですか? 皆で一緒にお祝いしようって……!」
「だが、君の力は強大すぎる。このまま功績が皆に知れ渡れば、君の意見は通り過ぎるだろう。それでは駄目なのだ。君が私からこの国を乗っ取るつもりになれば、そうなってしまうだろう」
「私、そんなこと致しません」
「今はそうかもしれないが、未来はわからない」
「そんな……それに、なんで、今日なの……? 皆と祝いたかったのに……」
絶望と共に呟くと、ヴァーラシスは失笑した。
「君は今魔力がないだろう?」
それは当然だ。
戦争では仲間を護る為、国を勝利に導くため、魔力を使い身体はぼろぼろだった。更には、今日の勝利宣言の晴天の為の結界で、ほぼ魔力は尽きていた。
……そっか。今日しか、私を殺すことは出来ないんだ。
力が通常通りなら、いや、ただ一晩寝ただけで、私の事を捕まえるのはかなり難しくなるだろう。
私がその事に思い至ったことに気が付いたのか、ヴァーラシスは鷹揚に頷いた。
その瞳はいつもと変わらず穏やかで、私は絶望に襲われた。
「強すぎる力は脅威でしかない。諦めてくれ」
ヴァーラシスは冷たく言い放ち、魔術陣に魔力を流した。
そして、そのまま私の意識は失われた。
王城では今日隣国との戦争の勝利宣言が行われ、祝祭を行う予定だと聞いていた。
彼らの為に、私は城の周りに雨除けの結界を張った。
大掛かりな魔術だが、勝利宣言をする数時間は、雲一つない青空が広がっているはずだ。
晴天の中、民衆にたたえられ誇らしげにする彼らが見たかった。
私は城の地下にあるらしい一室で、そのことを漠然と考えていた。
ここには窓などはなく、薄暗い中に魔術の光が控えめに灯るだけだ。
地下室の周りの空気は晴天をまったく感じさせない薄暗さで、じめじめと重い。べたりと肌に張り付くような湿度が気持ち悪い。
信じていた。
彼らの為なら、どんなにつらくても平気だった。
戦場では率先して最前線に向かった。
しかし、その想いは手の込んだ魔術陣と魔封じの魔導具、そして周りにいる魔術師で答えられた。
大がかりな魔術陣には、貴重な魔鉱石が至る所に配置されており、魔術陣自体も強大な魔力が込められているのを示すように、薄く光っている。
こんな場面でなければ、幻想的でとても素敵だっただろう。
この大掛かりな魔術陣は、城に居る優秀な魔術師がつきっきりに作成しても一カ月以上はかかるはずだ。
……最初から、こうする予定だったんだ。私が国の為に戦っている時から。
こんな風に魔封じに両手を拘束されていても、まだ信じられない。
涙が出そうになるのをぐっとこらえていると、コツリと足音が響いた。
「不可視の黒聖女と呼ばれる君も、こうなっては普通の少女の様だ」
「ヴァーラシス殿下……どうして」
嘲るような言葉と共に、ヴァーラシスが現れた。
貴族が私の事を見下したり遠巻きにしている中、彼は私に優しくしてくれた。
彼が居たから、戦場にいる間は皆が私を仲間として扱ってくれた。
いつも優しく名前を呼んでくれたのに、今の彼の声は冷ややかで感情が全くわからない。
一緒に戦争を勝利し仲間だと思っていた彼は、私の事を見下ろし、場違いなぐらい綺麗に微笑んだ。
「君の力は強大で、その為あっという間にあの大国に勝利することができた。とても、感謝している」
「だったら、なんでこんな事をするんですか? 皆で一緒にお祝いしようって……!」
「だが、君の力は強大すぎる。このまま功績が皆に知れ渡れば、君の意見は通り過ぎるだろう。それでは駄目なのだ。君が私からこの国を乗っ取るつもりになれば、そうなってしまうだろう」
「私、そんなこと致しません」
「今はそうかもしれないが、未来はわからない」
「そんな……それに、なんで、今日なの……? 皆と祝いたかったのに……」
絶望と共に呟くと、ヴァーラシスは失笑した。
「君は今魔力がないだろう?」
それは当然だ。
戦争では仲間を護る為、国を勝利に導くため、魔力を使い身体はぼろぼろだった。更には、今日の勝利宣言の晴天の為の結界で、ほぼ魔力は尽きていた。
……そっか。今日しか、私を殺すことは出来ないんだ。
力が通常通りなら、いや、ただ一晩寝ただけで、私の事を捕まえるのはかなり難しくなるだろう。
私がその事に思い至ったことに気が付いたのか、ヴァーラシスは鷹揚に頷いた。
その瞳はいつもと変わらず穏やかで、私は絶望に襲われた。
「強すぎる力は脅威でしかない。諦めてくれ」
ヴァーラシスは冷たく言い放ち、魔術陣に魔力を流した。
そして、そのまま私の意識は失われた。
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