冷酷な御曹司は虐げられた元令嬢に純愛を乞う
「今朝は司兄様、起きてくるのが遅くない?
お休みだからって、いつもなら竹刀を振るっている時間なのに、私起こしに行ってこようかな。」

朝食を一緒に食べ終えた、麻里子が立ち上がろうとするから慌てて止める。

「昨夜、帰りがとても遅かったようなんです。もう少し寝かせて差し上げましょう。」

きっとあまり寝れていない筈、毎日遅く迄働いて、亜子の事まで気を回して、本当に申し訳ない限りだから、せめて少しでも長く寝て欲しいと願ってしまう。

その後、しばらく麻里子の宿題を手伝いながら過ごす。


お昼過ぎ、司から声がかかり昼食がてら出かける事になる。

司が運転する車の後部席に麻里子と莉子で乗り込む。

「司兄様、莉子さん今日のお出かけ知らなかったみたいですよ。なんで本人に何も言わないんですか?」
車が動き出して早々、麻里子の説教が始まる。

「言って無かったか?」
何を麻里子から言われても、どこ吹く風の司は軽く受け流す。

「もう、我が家の男共と来たら、学兄様なんて朝帰りだったのよ。何処をほっつき歩いてるんだか、だいたいお父様が甘いのよ…。」

麻里子のお小言はしばらく続き、それを司は受け流し、莉子は笑いを堪えながら聞いていた。

きっと、彼はわざと言わないんだと思う。

今日出かける事もきっと私が遠慮して断ると思うから、着物の事もきっと東雲家に帰らせない為…。

彼の不器用な優しさがそうさせるんだと理解する。
昨夜の今日で意識してしまい、なかなか顔を見れないでいる。

バックミラー越しにそっと伺うと、笑みを浮かべた司とミラー越しに目線が合う。
それだけでドキンと鼓動が跳ね上がるから、視線を急いで車窓に戻す。

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