冷酷な御曹司は虐げられた元令嬢に純愛を乞う
「明後日には横浜に行くが、準備は大丈夫か?」
莉子を立ち上がらせて道場の中に招く。

「…はい。一応の荷物は後に届くよう昨日の昼に宅配業者にお願いしました。」

身の回りの事については莉子任せにしていたが、滞りなく手配してくれたようだ。

「体調は?準備で疲れたりしてないか?」

「大丈夫です。千代さんも麻里子様も手伝ってくださって、楽しく荷造りが出来ました。」
微笑む莉子を見てつられて笑顔になる。

「それなら良かった。何も手伝う事が出来ず、申し訳なかった。出来れば荷造りくらいは手伝いたかったんだが…。」

「お気になさらないで下さい。
それよりも、司様のお身体の方が心配です。お仕事毎日遅くまで……大丈夫ですか?」

「俺はずっとこんな生活だったから問題ない。
横浜の初日は3日休日をもらっているから、明後日からは少しのんびり出来る。横浜で行きたい場所があったら一緒に行こう。」

「本当ですか?嬉しいです。司様は…」
俺は話の途中で莉子の唇に人差し指を置く。

えっ⁉︎と、驚き目を丸くする莉子に微笑みかけ、
「そろそろ、様は辞めてもいいんじゃないだろうか?」

首を傾げる莉子に諭すように話しかける。

「横浜に行ったら2人きりだ。ずっとかしこまった話し方をされたら俺も息が詰まる。」

「なんて…お呼びしたら…失礼になりませんか?」

「何でも…様以外なら許す。夕方までに考えておいてくれ。」
問題を提示して夕方会うまでの楽しみにする事にする。

こくんと頷き困り顔の莉子に俺は満足して、朝食に行こうと誘う。

今日1日きっとその事で頭が一杯になってくれるだろう。妹との再会を気に病み悩み込むよりマシだろう…と密かに思う。
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