冷酷な御曹司は虐げられた元令嬢に純愛を乞う
朝食には莉子が焼いただし巻き卵もあって気分が上がった。

横浜に行ったら朝夕共に莉子が俺の食事を用意してくれる事になる。嬉しいと素直に思うが、負担になってもいけないと思う気持ちもあるから、とりあえず女中の1人くらい雇おうと考えている。

ずっと仕事の引き継ぎで忙しい日々だったが、ここに来てやっと実感が湧いてきた。

後2日で実家から解放され、ハレて莉子と二人暮らしだ。

よく考えたらこんなにも嬉しい事は無い。
結婚を早めに進めるべきだと言う塚本の言葉も一理ある。

こんな浮かれた事を莉子に話したら引かれるだろうか…。

彼女の俺に対する気持ちは正直なところ分からない。
聞くのも怖いと言う心境に陥っている俺は臆病者だと、自分自身が嫌になる。

仕事だったらなんだって怖いもの知れずなのに…要は彼女に嫌われるのが怖いのだ。

そんな事を考えている間に着替えが終わり、莉子が選んだネクタイを締めてくれる。今日は紺にストライプの白のラインが入ったネクタイだった。

彼女の好みだろうか?
紺色を選ぶ日が多いと思う。無難な色だと言う事もあるだろうが、好みの色ならばもっと買い揃えたいくらいだ。

しかし…この距離は口付けが出来る距離だなと、つい邪な事を考えてしまう。

この場に千代が居なかったら、本能的に抱きしめてしまうところだ。

「出来ました。」
そう言って微笑む彼女の顔を見る事が朝の至福のひとときであるのは言うまでもない。

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