冷酷な御曹司は虐げられた元令嬢に純愛を乞う
「多分、お囃子も入れて10人ほどで来る筈だからすぐ分かると思うんだけど…。」

学は先程から、辺りをソワソワと見て落ち着かない様子だ。

「莉子、寒く無いか?」

一方司はそんな学の事は気にも止まらぬようで、今朝から降り出した雪が積もる足元を気にして莉子の事ばかりを心配する。

「大丈夫です。雪仕様の下駄をお借りして来ましたし、おしるこが温かくて美味しいです。」

莉子は終始にこにこと美味しそうにおしるこを食べている。

「なぁ、君達なんなんだよさっきから…。
俺がどれだけ通い詰めてやっと得た情報なのに、縁日なんて楽しんでる場合じゃ無いよ?」

学が分かってるの?っと言いたげに腕を組んで2人を白々しく見てくる。

「ごめんなさい…。学様には大変なお力添えを頂き感謝してます。亜子は昔から頑固なところがあって…本当に申し訳なく思ってます。」

「分かってるなら良いんだけどさ…。
旭ちゃん本当にいい子だから、何とかしてあの世界から出してあげたいんだよね。」

学が亜子の所に通い始めて3週間以上は経った。

彼女を独占する為に消費したお金は結構な額になっていた。全て司から出てはいるがさすがの学も心配になってきている。

「兄さんもいつまで払い続けるつもり?」
学がため息混じりに司に聞く。

「そ、そんなに……お金が必要なんですか⁉︎」
と、何も知らなかった莉子が驚く。

余計な事を莉子の前で言うなと、司は学をひと睨みして、

「いや、大丈夫だ。莉子が心配する事じゃない。
学ならどうにか説得出来るだろうと期待したんだが…お前の説得で駄目なら、俺にはどうする事も出来ないな。」

学の話術に賭けていたところがあったから、ここにきて行き詰まりは否めない。

「私、一生懸命説得してみます。」
莉子はこれ以上司に浪費させる訳にはいかないと意気込む。

「そんなに気負いしなくていい。本人の気持ちを動かすのは並大抵の事では無いから、莉子が責任を感じる必要はないんだ。」
司は静かにそう伝え、莉子を少しでも安心させようと試みる。


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