冷酷な御曹司は虐げられた元令嬢に純愛を乞う
「亜子ちゃん…久しぶり。元気だった?」
莉子は亜子に向かい合い、そしてゆっくり近付いて行く。
「何で…なんで姉様がこんな所に…?」
亜子はまだ信じられないという顔を向けて、莉子を見つめる。
「この神社に亜子ちゃんが来るって…学様に聞いて待っていたの。会えてよかった。」
溢れ出す涙と共に亜子をぎゅっと抱きしめる。
「見ないうちに大きくなったのね…。」
と、離れていた時間の長さを実感する。
「なぜ…放っておいてくれないの?」
亜子から帰ってきた言葉は氷のように冷たくて、莉子の心はズキンと痛む。
「なぜって…あなたの事が心配だったの。ずっと…どうしてるかって…気にかけてた。」
「今まで1度も手紙さえくれなかったじゃない…兄様だって来てくれなかった。お姉様は東雲家の養子になって、裕福な生活が出来たんでしょ?私の事なんて忘れて幸せになったんでしょ。」
目を真っ赤にして莉子を睨む亜子の目に、宿る憎しみを垣間見て莉子は言葉を無くす。
「私は…あれから6年…東雲家で下働きの女中のように暮らしていたわ…。扱いは女中以下だったし、幸せとは程遠い毎日だったから、手紙を書く余裕もお金も無くて…貴方の事を忘れた事なんて一度も無かった。
それだけは信じて…。」
莉子の目から涙が溢れて止まらない。
少し離れた所から見守る司達にもそれは伝わっていて、今すぐ駆け寄ってその涙を拭いたいと、司は両手を握り締め1人葛藤していた。
「…じゃあ何故…今はお金持ちの婚約者なの?」
亜子からの抗議の視線を浴びながら、司との馴れ初めを話す。
「私は死ぬつもりで東雲家を出たの…。司様は…そんな私を憐れんで…同情して…救ってくれたに過ぎないわ。」
「…そんな人が、その妹まで大金を払って助けたいと…?そんな慈善事業なんて聞いた事ないわ。」
14歳の割に大人びた事を言う妹を見て、今までの苦労を感じる。
「亜子ちゃんは…どうして花街を出たくないの?」
「お姉様…出たくない訳ないじゃない。出れないのよ。私は藤屋の女将にお金で買われて今まで養ってもらった恩があるの。
この着物も…髪飾りも全てツケで買ってるの。全て払い終わらなきゃ出れないのよ…それが花街の掟なの。
それを見ず知らずの人に払ってもらうような…世間知らずでは無いのよ。」
亜子が声を荒げて莉子に思いのたけを投げかける。
「私はこの世界で…酸いも甘いも知ってしまったの…もう、何も知らなかった幸せなあの頃には戻れない…。」
亜子は真っ赤になった目で下唇を噛み、莉子を見据える。
「私は…ある意味世間知らずのまま…6年間を過ごしたのね…。亜子ちゃんの方がきっと何倍も苦労して大人になったのよ。
だからこそ…私は諦めない。貴方には幸せになる権利があるの。いくらかかっても一生かかっても諦めないから。」
莉子の決意も固い。
たった1人の妹を大切な家族を救い出したい。
「私が…水揚げに必要なお金がいくらか知ってる?
去年、花街を出て行ったお姉様が500円かかったの。
そんな大金を…あの人に頼めるの?
婚約者の妹が花街に居たなんて…世間様はどう見る?
お姉様は…何も分かってないから簡単に言えるのよ。」
莉子は亜子に向かい合い、そしてゆっくり近付いて行く。
「何で…なんで姉様がこんな所に…?」
亜子はまだ信じられないという顔を向けて、莉子を見つめる。
「この神社に亜子ちゃんが来るって…学様に聞いて待っていたの。会えてよかった。」
溢れ出す涙と共に亜子をぎゅっと抱きしめる。
「見ないうちに大きくなったのね…。」
と、離れていた時間の長さを実感する。
「なぜ…放っておいてくれないの?」
亜子から帰ってきた言葉は氷のように冷たくて、莉子の心はズキンと痛む。
「なぜって…あなたの事が心配だったの。ずっと…どうしてるかって…気にかけてた。」
「今まで1度も手紙さえくれなかったじゃない…兄様だって来てくれなかった。お姉様は東雲家の養子になって、裕福な生活が出来たんでしょ?私の事なんて忘れて幸せになったんでしょ。」
目を真っ赤にして莉子を睨む亜子の目に、宿る憎しみを垣間見て莉子は言葉を無くす。
「私は…あれから6年…東雲家で下働きの女中のように暮らしていたわ…。扱いは女中以下だったし、幸せとは程遠い毎日だったから、手紙を書く余裕もお金も無くて…貴方の事を忘れた事なんて一度も無かった。
それだけは信じて…。」
莉子の目から涙が溢れて止まらない。
少し離れた所から見守る司達にもそれは伝わっていて、今すぐ駆け寄ってその涙を拭いたいと、司は両手を握り締め1人葛藤していた。
「…じゃあ何故…今はお金持ちの婚約者なの?」
亜子からの抗議の視線を浴びながら、司との馴れ初めを話す。
「私は死ぬつもりで東雲家を出たの…。司様は…そんな私を憐れんで…同情して…救ってくれたに過ぎないわ。」
「…そんな人が、その妹まで大金を払って助けたいと…?そんな慈善事業なんて聞いた事ないわ。」
14歳の割に大人びた事を言う妹を見て、今までの苦労を感じる。
「亜子ちゃんは…どうして花街を出たくないの?」
「お姉様…出たくない訳ないじゃない。出れないのよ。私は藤屋の女将にお金で買われて今まで養ってもらった恩があるの。
この着物も…髪飾りも全てツケで買ってるの。全て払い終わらなきゃ出れないのよ…それが花街の掟なの。
それを見ず知らずの人に払ってもらうような…世間知らずでは無いのよ。」
亜子が声を荒げて莉子に思いのたけを投げかける。
「私はこの世界で…酸いも甘いも知ってしまったの…もう、何も知らなかった幸せなあの頃には戻れない…。」
亜子は真っ赤になった目で下唇を噛み、莉子を見据える。
「私は…ある意味世間知らずのまま…6年間を過ごしたのね…。亜子ちゃんの方がきっと何倍も苦労して大人になったのよ。
だからこそ…私は諦めない。貴方には幸せになる権利があるの。いくらかかっても一生かかっても諦めないから。」
莉子の決意も固い。
たった1人の妹を大切な家族を救い出したい。
「私が…水揚げに必要なお金がいくらか知ってる?
去年、花街を出て行ったお姉様が500円かかったの。
そんな大金を…あの人に頼めるの?
婚約者の妹が花街に居たなんて…世間様はどう見る?
お姉様は…何も分かってないから簡単に言えるのよ。」