冷酷な御曹司は虐げられた元令嬢に純愛を乞う
初めに振袖新造である、亜子達数人が舞を披露する。
それはそれは綺麗で、莉子は微笑みを讃えながらじっと妹の亜子を見つめていた。
もしかしたら、私もあそこで踊っていたかもしれないと、莉子は思ってしまうから、そうだったら…司じゃ無い誰かと…そう思うだけで背中がぞっと寒くなる。
思わず繋いでいる司の手をぎゅっと握ってしまうと、司もぎゅっと握り返してくれるから、ホッとして気持ちが落ち着く。
この人じゃないと嫌だと、いつの間にか思ってしまう自分がいる。この大きな手に触れていると不思議と安心する。
舞台が中盤になるに連れて、粉雪が段々と大粒の雪に変わっていく。
司は莉子に羽織らせたスカーフを頭まですっぽり被せるが、最後まで舞台を観ていたら風邪を引かせしまうのではと心配になる。
2日後には横浜に出発だ。
「雪も強くなって来た。そろそろ帰ろう。」
と、莉子を誘う。
こくんと頷きながらも、心配そうな目線を舞台に向けるから、
「亜子の事は学が上手くやってくれる。ここに学が来ないのは、上手く亜子の懐に入れたって事だ。」
そう司から言われ、莉子はパァッと明るい顔を向けてフワッと微笑む。
「若旦那、すいませんが雪が深くなって来たので我々は先に帰ります。弟がどこかにいると思うので、また、よろしくお願いします。」
莉子も一緒に挨拶をしてその場を後にする。
「莉子様…。」
席を離れようとする瞬間、若旦那に振袖の裾を掴まれえっ?と、莉子が足を止める。
「また…うちに立ち寄って下さい。…父も母も心配していましたから。」
若旦那はそれだけ言って、莉子の裾を手放す。
「ありがとうございます。また、こちらに戻った際には是非伺いたいと思います。」
莉子が丁寧に頭を下げて、懐かしい幼馴染に別れを告げる。
他に何か言いたかった事が本当はあったのでは…
と司は思うが口には出さず席を後にした。
それはそれは綺麗で、莉子は微笑みを讃えながらじっと妹の亜子を見つめていた。
もしかしたら、私もあそこで踊っていたかもしれないと、莉子は思ってしまうから、そうだったら…司じゃ無い誰かと…そう思うだけで背中がぞっと寒くなる。
思わず繋いでいる司の手をぎゅっと握ってしまうと、司もぎゅっと握り返してくれるから、ホッとして気持ちが落ち着く。
この人じゃないと嫌だと、いつの間にか思ってしまう自分がいる。この大きな手に触れていると不思議と安心する。
舞台が中盤になるに連れて、粉雪が段々と大粒の雪に変わっていく。
司は莉子に羽織らせたスカーフを頭まですっぽり被せるが、最後まで舞台を観ていたら風邪を引かせしまうのではと心配になる。
2日後には横浜に出発だ。
「雪も強くなって来た。そろそろ帰ろう。」
と、莉子を誘う。
こくんと頷きながらも、心配そうな目線を舞台に向けるから、
「亜子の事は学が上手くやってくれる。ここに学が来ないのは、上手く亜子の懐に入れたって事だ。」
そう司から言われ、莉子はパァッと明るい顔を向けてフワッと微笑む。
「若旦那、すいませんが雪が深くなって来たので我々は先に帰ります。弟がどこかにいると思うので、また、よろしくお願いします。」
莉子も一緒に挨拶をしてその場を後にする。
「莉子様…。」
席を離れようとする瞬間、若旦那に振袖の裾を掴まれえっ?と、莉子が足を止める。
「また…うちに立ち寄って下さい。…父も母も心配していましたから。」
若旦那はそれだけ言って、莉子の裾を手放す。
「ありがとうございます。また、こちらに戻った際には是非伺いたいと思います。」
莉子が丁寧に頭を下げて、懐かしい幼馴染に別れを告げる。
他に何か言いたかった事が本当はあったのでは…
と司は思うが口には出さず席を後にした。